釣道の頂を目指して

巨大魚に心を奪われたアングラーの心の掃き溜め。文多め、釣果少なめ。臆病で小心者の釣り人が描くサクセスストーリー(予定)。

GTの生態

最近、GTの生態に関する情報を度々求められている。

まあ自分は釣りのセンスは多分ないのだけれど、腐っても理系の大学院生なので多少は英語を読めたり論文を読めたりするわけである。

自分の得意分野で勝負するじゃないけれど、できることはやっていこうかなという感じでGTの生態について調べていこうかなと思いついた。

そこまでモチベは高くないけれど笑。

あと、多分というか絶対こんなことしている場合ではない笑。

それにこの記事がきっかけで知り合いがこのブログを見つけたりしたら非常に恥ずかしいので自分の中で留めたかったけど、多分それではあんまりやる気が起きないので記事にする。

知り合いの方はどうぞ「このブログは見なかった」という体で自分と接してください笑。

 

さて、最初から夢のないことを言うけれど、生態を知ったところで釣りに役立つかどうかなんて正直分からない。個人的には正直微妙だとさえ思う。

きっと日々磯にたって海と魚に向き合っているアングラーの方がGTという魚を(釣り魚という観点や側面では)知っているとさえ思う。

それでも藁にもすがる思いの方もいるようなので笑、ちょっとでもそういう真剣な人の参考になったら嬉しい。

 

まず始めに注意。

読み進める上でいくつか留意して頂きたいことがある。

1つ、GTの研究はおそらく熱帯の海域を中心に進められているので(日本だと研究価値が低い)ここで紹介する生態が日本の温帯~亜熱帯海域のGTに共通しているかどうかは分からないということ。

2つ、魚には個体差がかなり存在するということ。研究というのは種に着目してその種全体の傾向を提示するものであるので、個体レベルで考えると例外も多く存在すると考えた方が自然であると思う。

3つ、研究が全てではないということ。というのも、研究というのは研究者の主観というものがどうしても入ってしまうものであるからだ。着目されやすい目立った行動ばかりがクローズアップされたり、偶然の現象がさもその種の特徴であるかのように大々的に取り上げられてしまう可能性だってある。また、良い論文と悪い論文が存在するというのも気をつけなければならない事実である。これに関しては論文のアブストラクト(要約文)から結論を抜き出すだけでなく、材料と方法や結果などの項目を実際に自分で読んで結論を検討した上で判断する必要があるため、しっかりと研究をやったことがある人、その道のある程度の知識を有している人でないと難しいと思う(自分も多分できない)。正直論文の全てを読む時間は無いので、ここでは論文のアブストラクトや論文をまとめたサイトから得た情報を中心に記述していくがそこに留意して読み進めて頂きたい。一応出典も提示する努力をするので、気になった方はそちらも参照するようにしてください。

 

あと、経験が浅い自分の妄想や持論も含まれているのですがそこはご容赦を。出来るだけ明示して書くけれど。

論文にしても誰かの話にしても情報を盲信せず取捨選択して自分なりにGTという魚の像をまとめていくことが重要だと思う。

釣りは別にアカデミックなものではないので、間違った偏見や先入観がたとえあったとしても、それが釣果に繋がってさえいればさほど問題だとは思わないので。

何か間違いがあったら是非教えてください。

 

前置きが長くなりましたが、本題。

 

GTの基本情報

和名:ロウニンアジ

英名:Giant Trevally(ちなみにTrevallyはトレバリー↓ではなくトレバ↑リー↓みたいな感じで読む)

学名:Caranx ignobilis(学名は論文検索したいときに役立つ)

ヒラアジの中でも最大になる種で、これまでの最大記録は170cm、80kg。

 分布は次の図の通りで実はかなり広い(ロウニンアジ - Wikipedia)。大西洋には分布していないようだ。大西洋にもヒラアジ系の魚はいるがGTがいないのが面白い。最近になってペルー・エクアドル周辺で新たな個体群が発見されたらしい。北限の日本だけでなく世界に繰り出して狙うべき魚であると思う。

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ロウニンアジの分布

 

GTの食性

年齢や生息海域によって多少異なるが、多くの場合主に魚を中心に補食しておりその他にも甲殻類、頭足類(イカ、タコなど)、貝類などを捕食しているようである。

年齢や生息海域での食性の違いは次のような例が挙げられる。

・ハワイ島ではブダイ・ベラ科などの魚類が胃内用物の大部分を占めており、ロブスターなどの甲殻類イカ・タコなどの頭足類も見つかった。ブダイ・ベラ科などのサンゴ礁に生息する魚を中心に補食していたことから、サンゴ礁の浅い海域を中心に採餌活動をしているようであるが、イカやクサヤモロなども見つかったことから外洋に移動して採餌活動することもあるようである。

・アフリカ沖でも胃内用物の中心は魚類であり(なんとウナギまで!)、他にはイカやシャコ、ロブスターなどの甲殻類も見つかった。

・ハワイのKaneohe湾内では小型のロウニンアジの胃内用物の89%(体積比)は甲殻類であり、魚類はわずか7%であった。

・いくつかの海域で、サイズの増加とともに魚類への依存度が高まった。

ここから分かることは、GTが様々なものを食べているということ笑。以前twitterで話題になったように海鳥にド派手にバイトしてみたり、胃内容物から小さいウミガメやイルカなどが発見されたりする場合もあるようである。また、活き餌だけでなくカツオの頭やサンマの切り身といったデッドベイトなどにも食いつくし、かなりいろいろなものに興味を示す悪食であるようだ。

しかし、Kaneohe湾の例のように年齢や地域によっては偏食している個体群も存在することに注意が必要であると思う。また、根拠はないが個人的にはGTは大型であっても偏食する魚であると考えており、国内では奄美のヤシパターン?(キビナゴについてルアーへの反応が極端に悪くなるらしい、名前はうろ覚え)やそれ以外でも瀬際の5cm位のベイトを捕食して30kg位のGTがボイルしまくってるのにルアーには全然反応しなかったなんて話を聞いたことがあるし、海外でもオマーンなんかでは大量のカニが産卵かなんかで海面に湧き始めたとたんボイルしているGTのルアーへの反応が渋くなったという話もみたことがある。

また、GTのエサとして甲殻類というのは意外かもしれないが、かなり重要な情報かもしれない。自分が釣ったGTの胃にもセミエビが入っていたし、話を聞くと結構な割合で甲殻類が入っていたりするようだ。GTではないがナンヨウカイワリの胃なんかにもシャコのみが大量に入っていたことがあるし、キビナゴが大量にいる湾の中でカスミアジがチヌ狙いのワームずる引きに反応したのも見たことがあって(ただしサイズは大きくない)、ヒラアジ系の魚はサーフェスだけではなく実はボトムにもかなりの興味を持っているようである。

まあ、結局は活性が上がったらなんでも食べるんだろうけど、それ以外の時はルアーのサイズやカラー、動きなんかはかなり重要になってくるかもしれない。そういった点でルアーセレクトは時に釣果を分けるほど重要である可能性がある。GTと言えばキャスティングのイメージだが、ボトムを探れるジギングで無きゃ食わないパターンなんかもあるかも笑。

あと、釣ったGTの胃内容物を調べる際は、胃内用物が食性の全てを物語るわけではないということに注意が必要だろう。魚はフックアップすると胃の中身を結構な確率ではき出すし、消化されにくい甲殻類の殻なんかは胃に残りやすいので、胃が空っぽだったからって何も食べていなかったとは言い切れないし、甲殻類の殻のみが出てきても甲殻類を偏食しているとはちょっと言い難い。注意が必要である。

自分は今後GTの食性や年齢を調べるために釣ったGTはキープするつもりであるが、殺したくない場合は長いスポイトかなんかで胃内容物を調べられるかもしれない。淡水魚のイトウだとそうやって胃内容物を調べる研究があるみたいなので(麻酔が必要かも笑)気になる方は調べてみると良いかもしれない。

(追記:調べてみたらストマックポンプといってバス釣りなんかでは結構使われているらしい。大きいものを作る場合は次のリンクが参考になるかも。

https://flyfisher.tsuribito.co.jp/archives/mega-stomachpump )

 

GTの採餌行動について

ロウニンアジは成長すると主に産卵時しか群れを作らないが、まれに群れで狩りを行うこともあるようである。群れを形成するようなベイトを補食する場合、GTが群れで狩りを行うと狩りの効率があがるらしい。ただ、例えばサンゴ礁のベラなど群れを形成しないベイトを捕食する場合は、群れでの狩りというのはかえって非効率になるようである(まあ当然)。よくGTを釣ったら何匹かGTがついてきた、という話を耳にするが、これは群れで狩りを行っていた=群れを作るようなベイトを捕食していたということなのかもしれない。

GTが群れで狩りを行う場合はリーダーとなる個体がいて、その個体がベイトの群れに突っ込み、ベイトを食べながら群れを撹乱して群れから外れたベイトを他のGTが食べる、という感じのようである。

また、GTがハワイモンクアザラシ(熱帯にいるアザラシらしい)やサメについて回遊し、アザラシやサメが取り損ねた餌を横取りするような行動も観察されている。この事実もサメを釣るとGTがついてくる時がある、というようなよくある話と一致する。サメがいたらもしかしたらチャンスかも。イルカについたりは、さすがにないかな笑?あと、サメを釣った時についてきたGTはサメの食べているエサ(=ルアー)を狙っているであろうから、そういう時ルアーを投げたら一発で食ってくるかもしれない。サメとファイトしている釣友をとるか、GTをとるか、究極の二択。まあまず間違いなく後者である。

 

GTの成長

ロウニンアジは熱帯では生まれてから1年で約18cm、2年で35cm、3年で50~60cm程度に成長するようである(おそらく尾鰭長)。また、別の研究では生物の成長を推定するために用いられるvon Bertaranffy成長式にGTの年齢と体長をあてはめたところ、約8年で1m程度、24年で1.7m程度に成長することが推定された。

簡単に自分でvon Bertaranffy成長式を図示してみるとこんな感じ(1歳18cm 、2歳35cm、3歳55cm、8歳100cm、24歳170cmとして推定)。あくまで種の平均的な成長なので個体差は当然ある。

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ロウニンアジの年齢と体長

ただ、温帯~亜熱帯海域では熱帯と異なりGTの活動が低下するであろう冬が存在するため、これよりも成長が遅くなることが想定される。しかし、温帯・亜熱帯に生息しているGTが冬に暖かい海域まで回遊していたり、冬でもそれほど活動が鈍らなかったりすればあまり熱帯と成長は変わらないかもしれない。

魚の年齢は魚の頭部にある耳石に特殊な処理を施し、耳石に形成されている年輪を数えて調べるのが一般的である(詳しくはhttp://www.fklab.fukui.fukui.jp/ss/jiseki/uonojisekinituite.htmlhttp://www.fklab.fukui.fukui.jp/ss/jiseki/jisekinokazoekata.html)。

耳石に特殊な処理を施さなくても年輪を観察できる魚種もあるが、GTが果たしてそうかは分からない。特殊な処理を施さずに見る場合は、次の動画が参考になる。耳石の取り出し方や位置は魚種でさほど変わらないのでやってみてほしい。ただカブト割りは難しいと思うので、そういうときはやや手間ではあるが頭をゆでると骨が分離しやすくなり何も使わなくても手だけで取り出せるのでそちらのやり方の方が良いだろう。

youtu.be

鱗も年齢を調べるのに使えないことはないが、GTの鱗はかなり小さいため難しいかもしれない。

 耳石を持っている方、年齢を調べた方、是非教えてください。よろしくお願いします。

 

GTの大型・高齢個体は沖へ移動することが知られており、時に80m以深にまで移動することもある。しかし、そのような個体もしばしば浅い海域まで戻って産卵・摂餌を行うようである。

 

GTの性成熟・産卵

性成熟は熱帯では3-4歳、50-60cm程度で起こる。これも温帯ではどうかわからない。

ハワイ諸島では性比は雄:雌=1:1.39となり、雌の方が多いようである。

産卵は多くの場所で水温の高い月に行われるようであり、場所によって産卵期は次のように異なる。

南アフリカ:7~3月。ピークは11~3月。

フィリピン:ピークは12月~1月、6月と二つあるが、12~1月の方が盛んに行われる。

ハワイ:4~11月。ピークは4~8月。

熱帯でも季節性があるのだから多分日本だと夏~秋かなあという感じ(完全に個人的な意見)。

産卵は月齢によっても影響されることが分かっており、岩礁帯やサンゴ礁帯、沖の大陸棚などで群れで行われる。

ちなみに、ハワイではカスミアジとの雑種の88lbが記録されている。

カスミアジとGTは産卵時を含め一緒に群れを作る場合があるらしく、それが雑種の原因と考えられている(http://zoolstud.sinica.edu.tw/Journals/46.2/186.pdf)

 

とりあえず今はここまで笑。集中力が切れてかなり尻すぼみに笑。

結局全然出典を書けなかった。注意します。

また、移動や生息場所などについて順次更新していきます!

あと、自分で論文調べる場合はgoogle scholarなどがお勧めです。まあ、そうでなくてもgiant trevallyとググれば論文をまとめたサイトなどがたくさん出てくると思います!